スカールズデールの戸建て住宅は、90年弱経過した石積造、建築様式は第一次世界大戦のヨーロッパ戦線の兵役を終えた米軍人たちが盟友国フランスに匿ってもらったフレンチ・ルネッサンス様式の家に対する感謝と忠誠心を現したフレンチ・ルーラル様式の素晴らしい住宅です。冬のサンルーム「コンサバトリー」の増築以外は外観のほとんどは当時のままに維持管理されています。社会的に景観における個々の住宅の外観は街並み景観を構成する1つのモザイク画と考えられる欧米では、外観に関し厳しいルール、規制が課されています。しかし、住宅を一歩家の中に入るとそこは個人の自由、個性を発揮するエリアとなります。権利と義務が曖昧で「あなただけの家づくり」を行い施主の好みでやりたい放題の「ワガママ住宅」日本とは大きな違いを感じる部分と言えます。住宅のインテリアについても建築様式がありましが、時代要求にこたえる形でリモデリングが繰り返され一定期間ごとに一新されてきています。この日常的なリモデリングの努力によって、築年数で「耐用年数理論」がまかり通ってしまう日本とはけた違いの資産価値向上をもたらす要因となっています。欧米のストック社会のこの様子は住宅を表から眺めるだけの視察では理解できず、フロー経済下のスクラップ&ビルド政策で生きてきた日本人の建築関係者の実は気づかない点でもあります。欧米の不動産評価(アプレイザル)でリモデリングの評価がいかに大きなものであるか?またこのストック社会での住宅の維持管理、リモデリングの経験がない日本で口先だけの「資産価値が向上…」という軽はずみなセールストークが如何に空念仏であるかが分ってきたような気がしました。