米国中東部の建築・不動産視察(84) ﾆｭｰｼﾞｬｰｼﾞｰ州･ﾌｪｱﾛｰﾝ【ﾗﾄﾞﾊﾞｰﾝ開発】TND開発

NY近郊のﾆｭｰｼﾞｬｰｼﾞｰ州ﾌｪｱﾛｰﾝにある伝統的近隣住区開発(TND)は､公共交通である鉄道ｱﾑﾄﾗｯｸに乗ると約20分でﾏﾝﾊｯﾀﾝのｸﾞﾗﾝﾄﾞｾﾝﾄﾗﾙ駅に到着する。これは英国の都市開発の父ｴﾍﾞﾈｯﾂｱｰ･ﾊﾜｰﾄﾞによる100年以上前の田園都市ｶﾞｰﾃﾞﾝｼﾃｨｰ「ﾊﾑｽﾃｯﾄﾞ･ｶﾞｰﾃﾞﾝｻﾊﾞｰﾌﾞ」がﾛﾝﾄﾞﾝ郊外約40分の地に住宅地管理会社によるに資産価値の向上する住宅地開発に倣い､その手法を読みかえて米国で取り組んだ1920-30年代の開発地である。英国のｶﾞｰﾃﾞﾝｼﾃｨやｶﾞｰﾃﾞﾝｻﾊﾞｰﾌﾞから米国が進化されたのが住宅地管理法人HOA(ﾎｰﾑｵｰﾅｰｽﾞｱｿｼｴｲｼｮﾝ)の導入である。この米国の戦前の住宅地におけるｿﾌﾄとﾊｰﾄﾞによる開発は､戦後のﾌﾘｰｳｪｲを使った低密度な郊外型住宅地開発が犯罪に弱く､住宅地を塀で囲んだｹﾞｰﾃｯﾄﾞｺﾐｭﾆﾃｨｰやITを駆使したｽﾏｰﾄﾀｳﾝがｾｷｭﾘﾃｨｰ対策として導入されたが､結局人々の結びつきが脆弱な住宅地は犯罪に弱いことが分かり富裕層が逃げ出しそれと共に低収入な住民と入れ替わり資産価値が下落していった。戦後の主流であったこのﾌﾘｰｳｪｲを使った郊外型ﾆｭｰﾀｳﾝの開発手法を「ｱｰﾊﾞﾆｽﾞﾑ開発」と呼んでいたが､戦前の1920年代の伝統的な近隣開発住区であった高密度で人々の出会う犯罪に強い街としてこのﾗﾄﾞﾊﾞｰﾝ開発が見直された。反省から1980年代以降に全米でこの戦前の犯罪に強いTND(伝統的近隣住区開発)に倣い「ﾆｭｰｱｰﾊﾞﾆｽﾞﾑ開発」と呼ばれる開発手法が全米で展開されてきた。主に米国西海岸における「ﾆｭｰｱｰﾊﾞﾆｽﾞﾑ」と中東部のﾆｭｰｲﾝｸﾞﾗﾝﾄﾞ地区の「TND開発」の共通点は多く､資産価値を失わない開発手法として広く認められている。ﾗﾄﾞﾊﾞｰﾝ視察のこの日の午前中最後は「ｴﾙﾄﾞﾗﾄﾞ(最後の楽園)」と呼ばれる煉瓦造･ｼﾞｮｰｼﾞｱﾝ様式､地下1階地上3階のﾏﾙﾁﾌｧﾐﾘｰ(集合住宅)へと向かった。