建築リフォーム

米国中東部の建築・不動産視察(79) ニュージャージー州・フェアローン【ラドバーン開発】

今回の米国ラドバーン調査の目的には、戦前の1920-30年代の住宅地でありながら、なぜ資産価値を失わず物価上昇以上に価格が上昇し続けたのかにあった。都市経営の父と言われた英国人・エベネ ツァー・ハワードの「明日の田園都市」として 100 年以上前に開発されたロンドン近郊の「レッチワース・ガーデンサバー ブ」 に倣い、米国人設計者のクラレンス・スタインとヘンリー・ ライトが1928年に設計、1929 年ラドバーン田園都市建設が着工した。 世界大恐慌の真っ只中、ルーズベルト大統領はラドバーン開発を経済復興事業として取組んだ。計画は敷地 125ha、人口 25000人であったが、現在は 60ha、3100人670 戸の住宅地。これは、わたしたちの野木ローズタウン(56ha)や自治医大グリーンタウンと比較しても、徒歩圏内で関連施設まで移動可能な住宅地とわかる。が、ラドバーン開発が、資産価値を失わない最大の理由は、デベロッパーによる長期にわたる「住宅地経営」の存在がある。手離れよく販売され、その後間違いなく資産価値が目減りする日本との大きな違いはココにある。もちろん前回まで伝えてきた安全な街づくりのハードな面、「歩車道分離」におけるサイドウォークやバックアレイ、クルドサックや人々の出会うコモングリーンは重要であるが、これを真似て作った日本のニュータウン開発は「モノづくり」の機能だけのハードな部分に倣うだけの結果となっている。日本の不動産事業者が手離れよく売り逃げるのに対して、米国のデベロッパーは一見すると実に手離れの悪い事業を行っているように見える。実はこの違いが、米国で不動産を取得した後、資産価値が毎年物価以上に上がり続けるいくつかの仕組みである。
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