米国の住宅地に行って現地の人に話を聞いてみると「わたしのうちは1920年のビクトリアンよ」とか「うちは1970年のクラフツマンだ」などと建築様式で特徴を話すことがよく分る。現地で不動産情報誌やタブロイド版をみても5ベッドルーム3バスルームと価格が目立つが、ほとんどがデザイン様式と年式を表示している。ヨーロッパの視察ではユーゲントシュチール様式(ドイツ版アーツアンドクラフツ)とか、英国ならビクトリアン、アダム様式などその建築年代における王室の時代で分けていっている。やはりほとんどは、ルネッサンス建築、ゴチック建築、ロマネスク建築など宗教的な建築様式で教会や歴史的建造物を区分することが多い。米国の場合、建国が240年余なため「あの国は歴史文化が浅い」という人がいるが、その前の時代、東部地区の場合の英領やニューヨークはニューアムステルダムよ呼ばれオランダ統治の場所も、フレンチコロニアルと言うように仏領の場合も、西海岸一帯はスペイン領だったりする。そのため、独立戦争以前の建国前の建築物にものすごく特徴がある。移民や統治でやってきた人々は、祖国の建築工法や自らの移民であるがアイデンティティを建築スタイル(様式)に求め、またその地域の建築素材(木、石、土)から用材、組石、煉瓦、漆喰などを駆使して表現してきた。わたしは、米国は特に英領だったんだから煉瓦造の「イングリッシュ・コロニアルが多いんだー」程度しか以前は知識がなかったが、HICPMの会員になって7年経ち、ヨーロッパ、北米、一部のアジアの数々の国の建築視察に出かけ、英国からの移民たちが作ってきた建築、住宅はその時代ごとの名称と特徴を持っていることに驚いた。ここフィラデルフィアの中心部は市庁舎、博物館、美術館、司法庁舎、連邦銀行、あの秘密結社の本部など住宅建築ではなくても、ビクトリアン、ジョージアン、フェデラル(連邦)、第2帝政様式、グリーク・リバイバル様式などが判別できるようになった。この建築様式はもちろん住宅建築の様式にもそのままあてはめられるが、「建築様式」をマクロとするなら、細分化されたミクロのものとして「建築形式」で分けられる。この点についてはいずれの機会に掲載してみる。
組石の基礎だけが残る(リバティベル横)